手前板前: 包丁の研ぎ方




包丁の研ぎ方

包丁の研ぎ方を初心者にも分かりやすく解説して欲しい。そういう意見を頂戴いたしました。包丁の記事をいくつか書いていますが今回は魚を捌くに必要不可欠な代表的魚包丁でもあり、おそらくご家庭にある和包丁の代表でもあると思われます【出刃包丁】で砥ぎ方を説明いたします。出刃も安価な物、砥石もそこらのスーパーでも買えるごく一般的な物を使用しています。

まずは包丁研ぎに不可欠な部位を頭に入れて下さい。

庖丁の各部名称

A 切っ先
B そり
C しのぎ
D 刃先
E 峰
F 平
G マチ
H 口金
I 柄
がシノギから刃先にかけての面で「切刃
研ぐ部分はここです。

もっと細かい名称がありますが、普通は上の部分を憶えておけば充分です。特にシノギソリ切っ先が重要になって来ますので、把握しておきましょう。


和包丁の研ぎ方


※「ベタ研ぎ」の他にしのぎ筋からの凸面構造(湾曲砥ぎ)や、さらに刃先の「糸引き」などがあり、その結果としての裏押し(カエリ取り)などもありますが、専門家向けすぎて一般的には理解困難な為省略いたします。興味のある方はこちらの記事を御覧下さい

裏スキと切っ先の研ぎ方

※撮影の都合で画像では右手を添えていません。右手はしっかり柄を握りこんでおいてください。



包丁を研ぐ時の右手はこんな感じです。


つまり刺身包丁の三点押さえと同じで、背を固定してグラグラしないようにします。
左手は常に自分が研いでいる部分の裏を指先で押さえておきます。


(一) 砥石は少なくとも30分は水に浸けておきます。
(天然砥は不要ですし、石によって違いますので、その石の説明書きに従う)


(二) シノギから刃先の角度に合わせて20回ほど前後させ、まずは砥クソ(砥汁・砥石の粒子)を出して下さい。(これが出ないと研ぎにはなりません。本焼を仕上げたり等の特別な時以外はこのトクソを流し去ってはいけません。またトクソ出し専用の小型の砥石もあります)


砥糞
大まかに言うと、鋭い刃をつけたい場合に砥クソを利用。
滑らかなキメ細かい仕上げの刃にならす場合は砥クソを流し去る。

() 魚包丁でもっとも重要なのがソリから切っ先にかけての切れ味です。通常の研ぎ方でこの部分を砥いでいる職人も多数いますが、ここを普通に研いでいますと、ソリの部分が無くなって行きます(刃線が直線になる)のでおいらは下記の研ぎ方をお勧めします。
切っ先に重心をおいて引き研ぎにします。ひらがなの「し」の字になるようなイメージで手前に引く力を強くします。ソリから先の部分のみを研いでください。


(四) 20回ほど研いだら裏返して半円を描くように「かえり」を取ります。角度はつけないように。


(五) ソリと切っ先に刃が付いたか爪に当てて確認します。爪に食い込んで包丁が動かない様でしたら充分です。


(六) ここから通常の研ぎ方になります。研ぎで一番難しいのが角度で、何度が良いとは一概に言えるものではなく、人によって違ったりもします。しかし片刃包丁はシノギがありますので、シノギから切っ先の角度に合わせて砥げば間違いありません。言葉通りの「シノギをけずる」作業と言う訳です。押し研ぎが基本です。押す力を強くし、引くときは力を抜きます。添えた左指を切らない様に注意して下さい。刃線全体を満遍なく研ぎましょう。


(七) 50回ほど砥いだら裏返して軽くカエリを取ります。決して裏を研ぎこんではいけません。1〜2回なぞるくらいで充分です。(これを2〜セット繰り返します)


カエリ 刃表を研いだら刃線の裏にバリ〔金属カスの出っ張り〕が出ます。それが(返り)です。

*切れ味を出す為に刃先を起こして(角度をつけて)砥ぐ場合は15度くらいが適当です。角度が深いと切れは増しますがすぐに丸刃(馬鹿刃)になってしまい、元に戻せなくなるケースが多いですので、シノギ面(切刃)に従って素直に研いで行く事をおすすめします。
また、あまりにもしつこく研ぎ過ぎても馬鹿刃になります。研ぎすぎには注意。

*砥石は全面を使いましょう。
庖丁の研ぎ方_《砥石全体を使う研ぎ方》

*水は砥石が乾かない程度の少量(数滴)をときどきかけてやれば結構です。水道水を砥石に流し放しっぱなしで研ぐなどは最悪ですので真似しないで下さい。
そういう悪い研ぎ方をしたら包丁はこうなります

洋庖丁研ぎは6/4


ついでに一番普及してると思われます洋包丁の牛刀型の研ぎ方も紹介しておきましょう。洋包丁は両刃ですが例外を除いて完全に左右対称の角度をしてるのではありません。和包丁と同じく片側の角度がやや深くなっています。しかしあくまで「やや」ですので、片刃の和包丁と同じ角度で研ぐのはいかがなものかと思います。(和食関係者はこれをやる人が多いですが)

ここを研ぐときはコイン三枚分の角度。


そして裏を研ぐときはコイン二枚分の角度。

和包丁と違い、両側をほとんど同じ頻度で研ぎます
(和包丁は裏を砥ぐ必要はありません)
そしてソリ部分から先は、上と同じく「し」の字に引き研ぎしましょう。


初めて研ぐ方は【新品の分化包丁の研ぎ方】を参考に
片刃と両刃の庖庖丁研ぎ【動画】丁研ぎ動画もあります。参考にして下さい。

*こちらも御覧下さい 庖丁が切れない|洋庖丁研ぎ

あるていど研ぎ方に慣れたら、こちらのページをごらんください
  包丁に刃をつける



包丁研ぎで大切なこと

研ぎ方の手順とか刃の角度などはケースバイケースです。
それに個人の好みなどもありますので、「研ぎ方はこうだ」とか「こういうふうに研ぐ」といった決め事みたいなのは有って無い様なものです。

しかし様々な物事と同じく、研ぎにもやはり幾つかの絶対的な決まりがないわけではありません。

そのひとつが「砥汁」または「粒子」の扱い方。
砥石はその石の粒子を利用して金属の刃物を研ぐ道具です。
石が乾燥し過ぎていては金属を傷めますので水を使います。
(あまりに水を吸わせると石が弱まる(柔くなる)
なので「水は石が乾かない程度」を使用するのが良い。

石の粒子と水分が合体したものが「砥汁」。所謂「とくそ」です。
これによって刃を研ぎだしていますので、砥汁を全部水道で流すやり方は駄目。

気をつけなければいけないのは「粒子は石の番手で全然違う」という事。
例えば刃の修正とかステン包丁の刃を付けるのに使う「180番〜200番くらい」の石(荒砥)を使うと荒い砥汁が出ます。次に1000番くらいの中目、最後に6000番の仕上げという具合に研ぎ進める。

この時、前に使った砥石を変える段階で完全に汁(粒子)を流す必要があります。
少しでも粒子が残っていれば番手を上げていっても無意味なのですよ。
荒い粒子が包丁と細目石両方に傷を付けるからです。


荒砥を使う。荒い粒子が沢山出てくる。


粒子は完全に洗わないとアチコチに残る。
包丁にも研ぎ台にも残っている。その砥汁が包丁に傷をつける。


包丁の敵は「サビ」。
サビの原因は包丁についた細かい傷です。
石を変えたら、包丁、砥台、砥石、この3つを流水できれいに洗い流しましょう。
前の砥汁が少しでも残らないようにします。
出来れば水桶の水も変えた方が完全です。


包丁の刃が欠けたら
刃欠けでも切っ先の折れでも、一番良いのは修理に出すことですが、包丁研ぎにある程度慣れた人なら自分で直すことが出来ます。
刃が欠けた場合、その部分を荒砥に正面から当てて、まず欠けた凹部分を消して直線に戻します。当然切れなくなりますが、後で研ぎ直せばよいので問題ありません。


包丁の切っ先が折れたら
柄を強く持って、コンクリ等の硬い地面で先端の刃部分を擦りつけ、大まかに元の形に戻すのが一番早い。面直しや補修専用の固い荒砥を持っていればそれを使えばいいです。まず火花が出るほど大胆に削り、折れた先端の形を戻すこと。それから荒砥・中砥・仕上げと順番に研げばよい。
※これは古い包丁やコンコルド包丁などを改造して綺麗な形にする方法にも応用できます。そのような包丁は先を折って(消して)しまうのが早いからです。





さてもうひとつ、この包丁は完全に両側が同じ角度でして、
おいらはデザートを細工したりする用途に使っています。
これはカミソリ研ぎします。カミソリは牛革などで撫でる様に両側を研ぎますけども、あれと同じ要領で砥石を撫でる様に完全に裏表同じ角度で研いでいます。
 

切れ味は抜群ですよ。


全鋼の本焼包丁はまた違う配慮が必要になりますが、
(切刃の曲面化、裏押し、サーベル状シャッポ、青・白鋼の砥石のせ等々)

そもそも本焼を使うには研ぎに長年の経験が不可欠ですから、そんな人に対して研ぎ方の説明など必要あろうはずがありませんので省略いたします。

板前は包丁研ぎを「磨ぎ出す」とも言う事があります。
この裏には砥ぎすぎてはいけないという意味も含まれているんですよ。刃先をいかに上手に出すかが、包丁の切れ味と寿命を左右します。無意味にガシガシこすってしまえば5年も持たない場合もあるし、包丁の性質を深く理解してる人は何年たっても減りが出ないくらい差がついてしまいます。普段から良く手入れをしてるので、深研ぎをしなくて済むからです。

包丁は研げば当然金気が出ます。金属臭ですね。
ですから料理の直前に研ぐのはどうかと思います。板前の場合は店の営業が終わってからあたる(包丁を研ぐ)のが常識になっています。刺身に金属臭などさせたら最悪ですから。ですから釣りなどで魚を捌く場合でも、「ひと仕事を終えて」から研いで仕舞うという習慣をつけた方が良いです。

柄もよく洗い、乾いた布巾(新聞紙等もよい)で水分を完全に拭き取ってからしまって置きましょう。それとサビは癌と同じで、放置しておくと治癒が不可能になってしまいますので、早期治療が肝心ですよ。


包丁の錆を落とし、ピカピカに磨く




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