手前板前:本焼「青紙」と板前




和庖丁

「よい板前になるには良い包丁を持たねばならない」
これは正解でもありますが、間違ってもいます。
「庖丁だけが良くても意味が無い」これもひとつの意見であり、
その謂わんとする事も理解出来ます。

しかしね、人は正装すると背筋がシャキンと伸びて、心身ともに引き締まるものです。これは和装も洋装も同じ事。

仕事というのは、最後は結局【気合い】なんですよ。

気合いというのは集中力ですね、
緊張感を持ってのぞむという事です。

この意味では本焼き包丁の厳粛な輝きは、絶対プラスになります。


そして何時しか、包丁の素晴らしさに見合う腕に成長していくというのが理想だし、それが良い包丁を持つ意味ってもんです。

だから修行の初期に本焼を買うのは、よい事ではあります。


しかし、おいらもそうなんですが、長い年月が経ちますと、日々の忙しさに飲み込まれて、いつの間にか本焼を仕舞いこみ、便利な洋包丁を使ってたりします。これはこれで、間違いではないと思うんですね、最近。

要は、状況にあわせるという事なんです。

老舗の超高級料亭などじゃ、青の本焼を手離す事はできないでしょうが、養殖の鰤や鯛を次から次に捌かなきゃならない様な仕事でしたら、メンテナンス等を考えると、仕事の邪魔にしかなりません。

本焼青鋼(青紙)


自分の仕事にあわせて、上手に包丁を使い分ける、
そういう事だと思います。

その為に、包丁という物の特性を多少は知っておきましょう。


和庖丁の基本


和包丁の土台 ハガネ

和包丁は和鋼で作られます。
その製造のルーツは千年以上の歴史がある、日本刀の伝統技術。
それが江戸時代から、包丁鍛冶に継がれました。
材料は玉鋼です。
その玉鋼は砂鉄から生まれます。
土で炉を造りその中に松炭、砂鉄、又、松炭、砂鉄と重ね合わせながら、ふいごで空気をふきこませ、 加熱しながら、溶かしていく【たたら】ここから溶けて流れて出てきた溶解鉄が【玉鋼】です。

けど、現在の世で【たたら】と【玉鋼】は、高望みってもの。

今、玉鋼の役割をしているのが【安来鋼】(ヤスキハガネ)です。日立金属鰍ェ開発したものです。

刃物鋼は【】とも呼ばれまして、

青紙スーパー
青紙2号
白紙3号
白紙2号
白紙1号
黄紙3号
黄紙2号

などがあります。
(青の1号もありますが極めて稀です)
一応高級な順番に並べましたが、刃物は、硬さや粘りなどの配分がありますので、値段だけじゃなんとも言えません。これは、炭素鋼・合金鋼系ですが、他にステンレス系の銀系、ATS34などがあります。

白紙、黄紙は基本的には不純物を極力低減した純粋な炭素鋼で、焼入れが難しく、鍛冶職人の技次第で切れ味が良くも悪くもなりやすい。不純物の少ない純粋な炭素鋼です。

青紙はタングステンやクロムや炭素の化合物(合金炭化物)を含む硬度のある鋼種で、白紙、黄紙に比べて高価。磨耗しにくく、いわゆる長切れする包丁になります。

本焼と霞焼き

和包丁は大きく、本焼と霞焼きに分けられます。
本焼とは無垢の鋼で作られた、ハガネだけの包丁です。
切れ味が長持ちし、刃研ぎによる形くずれがあまりない。
しかし、
製法が難しい為、品質にバラツキがある事
硬い為刃研ぎに時間がかかるし難しい事
価格が高い事
などで、あるていど経験を積んだ人でなければ容易に扱えません

霞の和包丁は表に鉄、裏に鋼を鍛接してるため、はり合わせとも言います。
表と裏に違う材質を使っている為、鋼が鉄に押され、包丁が表に向かって歪む(反る)事や、切れ味の落ちるのが早いという欠点はあるものの、表が鉄だから研ぎやすいし、よく手入れすれば、本焼きより遙かに使い勝手が良い。


長所、欠点あいなかば。
使う人の用途や経験に合った包丁を選ぶことです

ステンレス鋼系

ステンレス鋼系の刃物は錆びにくいけど、切れない。
これがプロの評価でしたが、様変わりしてます。
鋼炭素ステンレス鋼を使った硬度の高い包丁が出来ています。

【銀3】炭素鋼並みの硬さと切れ味を得られるステンレス刃物鋼『銀三』
美しいフォルムで世界でも有名な『グローバル』は手術に使うメスと同じ、超硬質モリブデン・バナジウムという素材を使ってまして、一体成型の機能美だけじゃなく、切れ味も良い。他にもメーカーごとに色々な素晴らしい新鋼材が出ています。

これはグローバル


おいら、両方とも使ってますね。

グレステンもなかなか良いです。
材料が庖丁に吸いつかない独特のリブは確かに便利です。




あと【墨流し】というのがありますが、鋼と地金を何層にもわたって折り重ねて叩いて独特の紋様を出したやつです。
同じ縞模様は二本と出来ません。美的観点から愛用する人も多い。


ステンレス鋼版墨流しではダマスカス鋼と言うのがあります。


大切なことはやはり「どんな用途で庖丁が必要か」を自分自身でしっかり把握しておく事だと思いますよ。


記事内の庖丁画像



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